名主地蔵さま


西方寺のお地蔵様にまつわる話しです。

むかし昔、江戸から領主のお姫様が村に船でやって来ることになりました。
代官所の役人や村役が、岡本の浜に大勢出迎えて待っていました。
やがて船が沖の方に見えて来ました。
すると、今まで穏やかだった海が急に荒れ出しました。
みるみるうちに風が強まり、大波が立ち、沖の船は姿が見えなくなってしまいました。

数日が経ちました。
海が穏やかになると、浜にお姫様の持ち物や衣服が、木片などと一緒に流れ着きました。

村は貧しく、みんな貧しい者たちばかり。
流れついた値打ち物をこっそり山分けし、木片は埋めたり燃やしたりしてしまいました。
噂を聞いた代官所の役人が見回りに来ましたが、浜はきれいに片付けられていて何の跡形もありませんでした。
村人たちに訪ねても、

「浜は、いつもと変わりございません」

「何も流れ着きませんでした」

と、答えるばかりです。

やがて役人たちも諦めて引き上げようとしました。

その時、一人の役人が少し離れた所で立ち小便をしました。
それを見た小さな子供が大声で言いました。

「あれ、役人様がお姫様の物を隠した所に小便してるよ」

役人たちはその言葉を聞き、すぐにそこを掘らせました。
中からは船の材料の金具や使い物にならないお姫様の持ち物が沢山出て来ました。
村人たちは全員縄でしばられて代官所に連れて行かれました。
その話を聞いた村名主は急いで馬で代官所に駆け付けました。

「申し訳ございません。すべては私一人のやったことです。おとがめは私がお受け致します」

と、申し出ました。
名主は首をうたれました。

西方寺の地蔵様は名主の供養のために村人たちによって祀られたものだといわれています。
今でも「名主地蔵」と呼ばれています。


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