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おお 腹くっちょう えんざん坊
いいつも こうなら 良うかんべえ
おお 腹くっちょう えんざん坊
いいつも こうなら 良うかんべえ
三つ掘の池のまわりから、村の人たちがはやす声が風にのって聞こえてきます。
楽しい野田のどろんこまつりには、こんな話があります。
むかし、むかしのこと。
利根の川ばたに、三つ掘の者が朝早く草刈りに行きました。
すると川上の方から、キラッ、キラッ、と綺麗に光るものが流れて来ました。
「おやっ、あれは何かな。宝物みてえだぞ。
村の若い衆に頼んで取って来てもらうべぇ」
威勢の良い若い衆が三人ほど、水かさの多かった川へ、ザッブーンと飛び込みました。
ちょうど向こう岸の村の者も、その光物を見つけて、「三つ掘の者に取られるな」と、飛び込みました。
さあ、どちらが先に泳ぎ着いて、持って来るかの争いになりました。
両岸には、大勢の者がこの騒ぎを聞きつけて見物にやって来ています。
飛び込んだ若い衆たちは、ぬき手をきってその光物に近づいて行きました。
そばまで来て、よく見ると、それは九輪の塔が浮いたり沈んだりしていて、その塔の先についている宝珠が、朝日を受けてキラキラと輝いていたのでした。
両岸の村の若い衆たちは、大水におし流されそうになりながら、その九輪の塔にしがみつき、引っ張り合いを始めました。
「何を。この宝珠は、おらの方の者が先に見つけたんだからな」
「そうはいかねぇぞ。これに先に手が届いたのは、おらの方じゃねぇかよ」
そのうちに、後から後から両岸の村の若い衆たちが、応援にかけつけて来たので、
まるで、水の中でみこしを担いでもみ合うような騒ぎになってしまいました。
見物の者たちは、自分の村の方へ大声で応援をするので、若い衆たちも引くに引けません。
九輪の塔は、向こう岸へ少し近づいたかと思うと、すぐにこっち岸へ、こっち岸へ近づいたかと思うと、すぐに向こう岸へ。
朝に始まった宝珠の奪い合いは、昼を過ぎてもケリがつきそうもありません。
と、そこで三つ掘の女たちに良い知恵が浮かびました。
「そうだ、あんなに大勢が水の中で、奪い合いをしても、塔に手をかけてるのは何人もいねぇよ。
少しずつ若い衆を陸に上げて飯を食わせてやるべぇ。きっと力がつくよ」
急いで家に戻ると、大きなにぎり飯を作って来て、二、三人ずつ岸に上げては、腹一杯食わせてやりました。
三つ掘の若い衆たちは、もりもりと力がわいて来ました。
また村の者たちは、村の者たちで、
おお 腹くっちょう えんざん坊
いいつも こうなら 良うかんべぇ
と、声を揃えて励ましました。
向こう岸の者たちが、これに気付いて、
「しまった、にぎり飯を作って来ーい!」と岸に向かって叫んだ時には、もう九輪の塔は三つ堀の方のすぐそばまで引っ張られて来てしまっていました。
この塔の宝珠は、とても見事なものだったので、神社におさめ、次の年からは祭りみこしに乗せて練り歩くようになりました。
それで、誰が言い出したものやら、いつの年からか、
池の中にお腹一杯に飯を食った若い衆がみこしを担ぎ込むようになりました。
すると、周り中から子供たちが、泥を投げつけ、みこし衆をわざと岸に上げないようにするようになりました。
宝珠の奪い合いをいつまでも忘れないようにしようというわけかも知れません。
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