ばあ様の目薬


むかしむかしのことです。
ある所にたいそう孫娘をかわいがっていたばあ様がいました。
ところがこのばあ様、どうしたことか目がだんだん見えなくなってしまいました。
息子夫婦は、あっちの医者こっちの医者と、色々手を尽くしましたが、良くはなりませんでした。

ある日のこと、旅の坊さんがやって来ました。
「このばあ様の目には、子供の生き肝が一番良いぞ」
と言いました。
息子夫婦は、ばあ様の病は直したいけれど、子供の生き肝を手に入れることなんか、どうにもこうにも思いもよらないので、困ってしまいました。

ところが、この相談を娘のお虎がこっそり聞いていたのです。
その晩、お虎は納屋で首をつって死んでしまったそうです。
「おらの生き肝をばあ様に食わしてくんど」
と、やっと習って書けるようになったカタカナで、何度も書き直ししながら書いてありました。
息子夫婦は、悲しくて、悲しくて涙が止まらず、何時間も泣き続けました。
それでも、お虎の気持ちを無にするわけには行かないので、生き肝をばあ様に食べさせました。
すると、何と、ばあ様の目は、たちまちにぴらりと開いて、よく見えるようになりました。

ばあ様は、目が見えるようになると、まっ先に、
「孫のお虎は、どこへ行っただい。この目でかわいい孫の大きゅうなった姿をよう見てぇもんだ」
と言いました。

しょうがないので、息子は、ばあ様にお虎が首をつって死んでしまったことを話しました。
それを聞いたばあ様は、まっ青になって、その場にしゃがみこんで泣き始め、四、五日の間、寝込んでしまいました。
食べ物もノドを通らないほどの悲しみでした。

ばあ様は、三十三番の札所の観音様にお参りして、孫のお虎の冥福を祈ることにしました。
何日も何日も巡礼の旅をして、とうとう最後の三十三番の観音様まで辿り着き、一生懸命拝んでいました。
頭の中は、お虎の小さい頃の姿だけが浮かんでいました。

すると、その時のことです。
「ばあ様、ばあ様」
と、かわいい声で呼ぶ者がいます。
目を開けて、そっちの方を見ると、これはまた、何と何と… 。
目の奥に焼き付いて離れない、お虎に生き写しの娘が立っていました。
「お前、どうして、こんな所にいるのだい?」
と、訪ねてみました。
「おらは、ここで観音様のお守りをさせてもらっているだよ」
と言いました。
「あぁ、ありがてぇことでごぜぇます。観音様が、孫のお虎を助けてくださったにちげぇねぇ。ありがてえことでごぜえます」
と、何度も何度もお礼を申し上げて、お虎の手を引いて家に戻りました。
家ではみんなが、夢ではないかと、たまげるやら嬉しがるやら、大御馳走して観音様にお礼のお祈りをしたそうです。


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