萱山の盗人


畑にコウボシ 田にヒルモ
馬加「長八」 なけりゃ良い

昔々、馬加(まくわり/現在の幕張)の百姓に長八郎という男がいました。
この男が屋根の葺き替えに使う萱が足りないので、隣村の検見川の萱山にこっそりと入り込んで、萱を盗みました。
それを検見川の者たちが見つけて大騒ぎになりました。
普段から馬加と検見川の者はあまり仲が良くなく、とうとう役所にまで話が伝えられてしまいました。

お役人の前に呼び出された長八郎は、いつもどおりに平気な顔をして座っていました。

「これ、そちは検見川の萱山に入り込んで萱を盗んだというが、それは本当か?」

と、お役人がたずねました。
立ち会いの検見川の者たちは口々に、

「お役人様、本当でごぜえます」
「長八郎は何度も盗みをしていますだ」
「長八郎の首をちょん切って下せぇまし」

などと言って、大騒ぎになりました。

「これっ、静かにせい」

と、お役人がたしなめると、長八郎が

「はっ、はっ」

と、土下座したまま、前に進み出ました。

「お役人様、確かにおらが、萱を盗みました。
 だけんど、人間の首は切られてしまえば、それでおしまいでごぜえますだ。
 萱山の萱はいくら切っても、春になれば、また新しい芽を出してくれますだ」

と言いました。

「ふぅむ、なるほど長八郎の申す通りであるな。もっともであるぞ」

ということになり、

「長八郎に罪はないことにする」

と申し渡されました。

それで検見川の者たちは、「畑にコウボシ 田にヒルモ 馬加「長八」なけりゃ良い」
と歌って、悔しがったといいます。


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