御馳走を腐らせた奉公人


むかしの話しです。
大穴村には岡本という大地主の屋敷があったそうです。
この屋敷の旦那さんはとても大きくて高い赤鼻だったので、「天狗様」というあだ名がついていました。

この屋敷には十何人もの奉公人がいましたが、みんな不真面目で天狗様も手を焼いていました。
ある時、天狗様は考えました。
朝飯のときに奉公人たちに言いました。

「おーい、今日は田の草取りだから精を出してくれよ。
 一生懸命やった者には、大御馳走をするぞ!」

しかし奉公人たちは、

「また天狗様がウソ言ってるな。
 晩飯は、どうせ煮付けに目刺が2〜3本つくだけだっぺよ」

などと陰口をたたいて真面目に田の草取りをしませんでした。

夕方になりました。
奉公人たちがゾロゾロ度って来ると、

「おお、今日は御苦労さんだったね。この暑いのに精出してくれたかな」

と言って、天狗さんはニヤニヤ笑いました。
奉公人の一人が、

「旦那様、朝のお約束の大御馳走は出してもらえますかい?」

と尋ねると、天狗さんはすました顔で、

「おや、お前たちにはもう大御馳走を出したはずだがねぇ」

と言いました。
奉公人たちはキツネに化かされたようにポカーンとしていましたが、そのうちに、

「やっぱりケチの天狗様の言うことはあてにならねぇなぁ」

と、ブツブツ文句を言いながら、その晩は出されたいつもと同じまずい飯を食べ、せんべい布団にくるまって寝てしまいました。

次の日もギラギラ照りの田の中を這いずり回って田の草取りをしていると、誰かが大声を上げました。

「おーい、こんな所におかしらつきの酒盛りの御馳走が出てるぞぅ」

みんな驚いてその周りをぐるりと取り囲んで、覗き込みました。
一升徳利も2〜3本立っているし、今まで見たこともないほどの上等の料理の数々です。
でも残念なことに、ツーンと腐りかけの匂いがしています。
奉公人たちはガッカリして、その場に座り込んでしまいました。

「あーあー、おらがの天狗様もたまには味なことをするなぁ」
「本当によう、おしいことをしたっぺぇよ」
「いつもいつもなまけ半分だと損をすることもあるわけだよ」

みんなが話をしているのを天狗様は陰で面白そうな顔で聞いていました。
それからというもの、奉公人たちも少しは精出して働くようになったかどうかは・・・、知りません。


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