三枚のお札


むかし昔、ある所のお話し。
女の子たちが、山の奥へ盆花とりに行きました。
ところが、その中の一人が迷子になってしまい、山の中で日が暮れてしまいました。
すると森の奥の方に明かりが見えて来ました。
女の子はほっとして、

「ごめんください、ごめんください」

と、戸を叩きました。

「こんなに遅くに、誰だい?」

と、白髪頭のばあ様が出て来ました。
女の子がわけを話すと、家の中に入れてくれました。
ところがすぐに戸を閉めると、縄を持って来て女の子をしばってしまいました。

「えっへっへっへ、久しぶりに子供のやわらかい肉が食えるぞ」

女の子は怖くてブルブルふるえて泣いていましたが、そのうちに、どうにかして逃げなければいけないと考えました。
そして、

「かわや(便所)へ行きたい、かわやへ行きたい」

と、泣き叫んびました。

「ああ、うるせえ子だこと。これじゃ寝ることも出来ねえや」

と、ばあ様は縄をつけたまま、かわやへ行かせました。
女の子がかわやの中でしくしくと泣いていると、その涙の光の中から白い着物の神様が現れて、3枚のお札を女の子に渡しました。

一枚目のお札は、「火となれ」
二枚目のお札は、「川となれ」
三枚目のお札は、「山となれ」と書いてありました。

そして、神様が女の子をかわやの窓から逃がしてやりました。

ばあ様はいつになっても女の子が出て来ないのでかわやに見に行きました。
しかし女の子はもういません。

「逃げられてしまったぞ。ようし、捕まえてやるからな」

動物のように鼻でフンフンとにおいをかぎながら追いかけ始めました。
女の子は夢中で逃げました。
ばあ様は鬼ばばあの正体を現わして、角を出し牙をむいて追いかけて来ます。
その早いこと早いこと!
とうとう女の子は、捕まりそうになってしまいました。

「火になれ!」

1枚目のお札を投げつけました。
火がぼうぼうと鬼ばばあを襲いました。
その間に女の子は必死になって逃げました。

「なんのこれしき!」

鬼ばばあは火の中をくぐって追いかけて来ます。
また、捕まりそうになってしまいます。

「川になれ!」

2枚目のお札を投げつけました。
女の子と鬼ばばあの間に大きな川が出来ました。
その間に女の子は必死で走りました。
鬼ばばあは川を泳いで追いかけて来ます。
またまた捕まりそうになりました。

「山になれ!」

鬼ばばあの前に高い山がそびえました。
女の子はとうとう自分の家へ逃げ戻ることが出来ました。

そこへ鬼ばばあが息を切らしてやって来ると、表の戸をドンドンドンドンと叩きました。

「何の用かね、うるせえぞ」

と、女の子の父が戸を開けました。

「女の子が来たはずだ」

と、鬼ばばあが目の色をかえて立っていました。

「ああ、女の子ならかまどの大釜の中に1人で隠れているぞ」

と言いました。
すると鬼ばばあは、大急ぎで大釜の中へ頭をつっこみました。
その瞬間に大釜のふたを閉め、大きな石を乗せ、火をぼうぼうと燃やしました。

「あっちっちっち、助けてくれぇ」

と、鬼ばばあは泣いて騒ぎましたが、

「助けたらこっちが食われてしまう」

と言って、火をどんどん燃やしました。
さすがの鬼ばばあも黒こげになってしまいました。


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