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房総高校野球物語

受け継がれる伝統

10年周期
 千葉が誇る伝統校・銚子商。昭和40年代には黄金時代を築き全国制覇も成し遂げた。しかしそれ以降は県内の学校数の増加による戦力の分散や有力私立の台頭により甲子園が遠くなっている。
 2005年(平成17年)は久しぶりに甲子園を狙えるチームに仕上がったと評判だ。全盛期時の監督・故斉藤一之の長男・斉藤俊之監督になって5年、エース遠藤、主砲・福田と投打の柱が揃った。
 くしくもこの年は前回甲子園出場時から10年。前回と前々回の間隔も10年であり、いつの頃からか「銚子商復活10年周期」として自然に期待を集め、逆に「今年甲子園に行けなければ永久に行けない」とも言われ、期待と重圧が渦巻く2005年であった。
 前年秋の大会では木更津総合に敗れ、春はライバル・習志野に敗れた。上位の力があるのは確かだがあと一つ勝ちきれない。

黒潮打線復活
 夏の千葉大会。銚子商打線が活発だ。往年の黒潮打線を彷佛とさせ、津田沼、柏井をコールドでしとめると、最初の関門・敬愛学園戦。近年めきめきと力をつけ、前年まさかの初戦敗退を食らった相手だ。しかしこの難敵を黒潮打線が呑み込みコールドで下す。更に続く東海大浦安戦をもコールド勝ちすると、「今年のチームは違う」と早くも甲子園の予感が漂い始めた。それは同時に想像を絶する重圧がかかっていることも意味する。
 銚子商の快進撃は続き、市立船橋、若松を下し、とうとう決勝に進出した。決勝の相手は拓大紅陵。千葉県の強豪私立の旗頭で、この年も甲子園を狙える充分の戦力が整っている相手だ。3点を追う苦しい展開ながらワンチャンスで同点とすると、猛暑の中、疲労が溜まっているエース遠藤の粘投で延長にもつれ込み、主砲・福田の一撃で拓大紅陵を突き放した。
 まさに10年周期。エースの好投と黒潮打線のパワー、有終の美は決して諦めない闘争心を見せ、銚子商の伝統を継承していることを証明した。

親父とともに
 「銚子商らしい豪快さと緻密さを兼ね備えた野球をしたい」
 選手時代は銚子商全盛期を父・一之監督と共に過ごし、誰よりも銚子商を愛し、また厳しさを知っている人物。それが斉藤俊之現監督だ。
 甲子園初戦、鳥取西を相手にリードは奪うものの苦しい展開。7回、おもむろに斉藤監督が天を仰ぐ。「親父、勝たせて下さい」
 直後、甲子園に全盛期の銚子商がいた。黒潮打線の炸裂。重圧に耐え、伝統を受け継ごうとする息子の姿に天国の父が力を貸してくれたのだろうか。偶然にしてはあまりに出来すぎた黒潮打線の爆発だった。
 試合後、まっ先に出た言葉は「千葉県の皆さん、全国のファンの方に、銚子商が甲子園に帰って来ましたという野球が出来ました」だった。単に「銚子商」という名前のチームが甲子園に出場したのではない。銚子商の野球そのものが帰還したのだ。黒潮打線がなければ銚子商ではない。本格派エースがいて、バント等の小技が出来、機動力もある。それが銚子商であり、また銚子商が甲子園に出るという意味の深さでもある。
 その上、甲子園の初戦は負けてはいけないという掟がある。相手も甲子園に来るだけのチーム。簡単に勝てる相手などいるはずがない。そういう場所で負けてはいけないという厳しい掟だ。それを見事にクリア。文句なし「力強い銚子商の甲子園帰還」だった。